恋を知らない
ドアはマリアのいる部屋のほうに設けられ、ベッドからは見えない。
マリアがドアを開け、外と何かしゃべっていた。人か、人型ロボットが来ているらしい。
用件はすぐに終わるだろう、と思っていたが、
「こっちへお願い」
マリアが指示を出すのが聞こえた。複数の人の気配がして、ゴロゴロと回転音を響かせ、何かを運び入れている様子だった。
運び入れが終わると、人が出ていき、ドアが閉められた。
「ねえ、シュウ、こっちへ来れる?」
マリアがぼくを呼ぶ声がした。
なんだろう、と思い、とりあえずベッドから降りて、トランクスとズボンを整えた。
驚いたことに、あのマリアが鼻歌を口ずさんでいるのが聞こえてきた。
となりの部屋へ入って、ぼくはぎょっとした。
「なんだ、それ?」