恋を知らない
「どうしてこんなことをするんだ。ぼくの『めぐみ』をめちゃくちゃに汚して。ぼくが何かしたか?」
「シュウ……」
「これまで、協会に言われるまま、きちんと精子を提供してきたじゃないか。それがぼくの仕事だと思うから、ちゃんと従ってきたじゃないか。『めぐみ』のことだって、別に協会の規約に違反したわけじゃないだろ? ただ、ちょっとかわいい子だな、って思って、写真を撮って、ほんわかした気持ちになっただけじゃないか。ぼくはそんなことさえ許してもらえないのか」
「シュウ、だから、こうして実際の姿になって――」
「黙れっ、マリア。お前にぼくの気持ちなんてわかるか。心がときめくなんて、わからないんだ。遠くからほのかに想っていれば、それでもう幸せだなんて、お前にわかるはずがない。わかるはずがないんだ。お前はセックスして、僕の精子を絞り取ってりゃあ、それで満足なんだろう? 嫌いだ。お前なんか、だいっ嫌いだ」
ぼくは激高し、たたきつけるように罵声を投げつけた。
「めぐみ」のマリアはしばらく答えなかった。気落ちしたのか、うなだれている。いつの間にか、その顔から淫靡さが消えていた。か弱そうな少女の顔になっていた。
やがて彼女は床に目を落としたまま、ポツリポツリと語りはじめた。