恋を知らない

ベッドのそばの椅子からガウンを取ろうと身をかがめたマリアの横顔が見えた。平面的な顔の線からすっと鼻筋が立ち上がり、薄い唇は引き結ばれている。クールで知的なキャリアウーマンという印象を受けた。

ぼくと同じクラスに、キョウという友だちがいる。彼に言わせると、マリアは、

――女が『きれいなひと』って言うときの美人なんだよ。整いすぎてて、おれなんか、逆に色気を感じないけどな。

ということだそうだ。

ぼくはそういうことには鈍くて、そんなものかな、と思うだけだ。

ピンク色のガウンを着たマリアが静かに寝室を出ていった。

これから彼女は自分の部屋にもどり、膣部のユニットを交換する。精液を収納した方のユニットをクーラーボックスに入れ、じきに玄関へ取りに来る集荷人に渡す。

それで今夜の業務はおしまいだ。

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