恋を知らない

なにもマリアが美人だから指名したのではなかった。そもそも、そのときのぼくにとって、マリアがすごい美人だという認識はなかった。

相手はだれでもかまわなかった。お金のために、仕事としてマリアロボットとセックスして精子を供出するのだ。よけいな感情など持ちたくはなかった。だから、気に入ったサンプルの女の子ではなく、偶然目の前にいた女性を指名したにすぎなかった。

それからマリアとの同棲が始まった。マリアという名前はぼくがつけた。単にマリアロボットだからマリアとしただけだった。

同棲を始めて1年半になる。

パートナーのマリアロボットは定期的にチェンジすることができる。新鮮な相手とセックスに励んで、たくさん精子を供出しろ、ということらしい。

ぼくは1年半の間チェンジせず、ずっとマリアと同棲している。

これは仕事なのだから、同じ相手と、同じセックスを、黙々とこなすだけだ。ぼくはそう考えている。

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