恋人として貴方に最低限にできること



「うわぁぁ、遅刻だぁ…」


「いいだろ。のんびりいこーぜー。」

どうしてこの人はこんなにもマイペースなのだろうか。
小さくため息をついてみる。


「とにかく、走らなきゃ間に合わないって」


「いや絶対間に合う。」

あーダメだ。
和樹のバカ。またからかわれてしまう。
頼むからクラスの人に二人で遅刻したことを冷やかされたくない。


「はー。ほら、見てみ。俺のスマホ」


「え?…あ。」

待ち受け画面のデジタル時計が表す時間は7時55分。
うわぁ…恥ずかしい…
勘違いしていたことも恥ずかしいが、和樹のスマホの待ち受けの画像が何より恥ずかしい。

画面は和樹の家の台所でエプロン姿で料理をしている俺だった。


「なんだよ、その待ち受け!」

話を逸らしたいという気持ちと待ち受けへの不満を半々で突っ込む。


「ん?見たら分かるだろ。可愛かったから撮ったわ」


「…恥ずかしいからやめろよ」


「恥ずかしがる所も可愛くてよろしい。」

…本気で恥ずかしいのに…
可愛いなんて言われたら…恥ずかしい……


「おー。火照ってんなー。朝からご苦労。」


「うるせーヤンキー。
学校にスマホ持ってきちゃダメなんだ〜。」


「おー、照れ隠しか。ご苦労ご苦労。」


…ああもう。恥ずかしいけどすんごい嬉しい…


「あ、元大。そういえば」

うわっ
急に静かになった。
雰囲気無理矢理変えやがって…


「好きだ。」


「へ!?」

桜並木の中、猫が俺達の前を横切る。
気づけば周りは同じ制服を着た生徒が溢れていた。


「へ!?じゃねーだろ。」


「だって…いきなりだったから…」

うわ…手繋がれてる…
朝からやばい…ドキドキする…


「タイミングなんてしらねー。
いいじゃん付き合ってんだから。愛してる。」

そういう問題じゃないのに…
朝からドキドキさせやがって…このバカ和樹。


「お前はどうなの?」
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