恋人として貴方に最低限にできること
ー放課後ー
「カラオケ行きたい。」
俺が言ったわがままを聞いてくれた和樹が椅子に深く腰掛ける。
俺は立ちっぱなしで音量調節等をする。
「あ゙あ゙あ゙あ゙。これくらいでいいだろ」
「そー?うるさくない?」
「おう。大丈夫よ。」
そういって和樹は折角調節したマイクを起き、早速料理が並ぶメニューに目を通し室内の受話器をとる。
「メガ盛りポテト1つ」
ぶっきらぼうに注文する和樹。
ああ…この人夜ご飯食べれなくなるなぁ…
久しぶりに作ってあげようかと思ったのに。
夜ご飯を作って食べてもらったら褒めてくれるかなって期待したのに。
小さいことだと思うが少し拗ねる。
…今夜は父さんの帰りが遅いから久しぶりに癒されたかったのに…。
「なに、拗ねてんの」
「なんでもねぇ。」
拗ねてしまっていることさえすぐに見抜かれてしまう。
俺の事見てくれてるってことかな…
きゅっ
軽く胸を締め付けられるような心地よい痛みが襲ってくる。
やっぱ、好き。
縮こまる俺を何気ない仕草で長い腕で肩を抱いてくれる。
「緊張してんの?」
「してないし。バカ…」
「はっ、ウブだよなお前も」
「うるせヤリチン」
「んっ…」
いきなりのディープキス…
相変わらず手馴れてる和樹のキス。
和樹が唇を離すとまるでまだ貪っていたいとでも言うように糸が引いている。
あぁ、恥ずかしい…
「気持ちよかった?」
「いきなりとかマジでないわ。
しかも長いやつとか。変態すぎ。」
「赤くなってるクセに。」
「…。」
もう、しらなーい。と、いう表現をするためそっぽ向く。
俺がどれだけたくさん一緒にいたいかなんて和樹にわかるわけないか。
話した訳でもないのに。
しばらく和樹のラップが続くが、恋愛ソングなんて歌われると心がきゅんっとする。
「歌うの疲れた。
お前なんか歌えよ。」
リクエストにあえて応えず急に甘えたくなり和樹の肩にもたれかかる。
こんな日常が続けばいいのになぁ、と
付き合って3ヶ月の愛しい彼氏に理想を語る。
「俺達なら絶対うまくいくから、
なんなら将来のこと今から考えてもいいんだぜ?」
将来…かぁ
遠い将来だと思うけど子供は欲しいんだよな。
もちろん俺達は男同士だからどうしても難しいけど。
でも、今言えることは
「俺の事、絶対離さないで。」
たったそれだけだ。
「離すわけねーだろ
愛してる。」
「…俺も。」
自分から舌を絡めてキスをする。
一つだけ言えなかったことがある。
心の中でひっそり願うしかない。
どうか俺を、父さんの手から連れ出して。
「うちに泊まってけよ」
あぁ、やっぱり俺は幸せだ。
「あ、うん、いいの?」
「いいから言ってんじゃん」
「でも父さんが良いって言ったら泊まらせて!」
「おけ。」