海に願いを 風に祈りを そして君に誓いを
事故から二ヶ月ほど過ぎたころ、優海は徐々に笑顔を見せるようになり、学校にも行けるようになって、三ヶ月経つころにはすっかり元通りの明るさを取り戻していた。

そのあと、心も身体も回復した優海は、事故のあとずっと住み込んで面倒を見てくれていた父方の祖母の家へと引っ越していった。

いちばんの仲良しだった優海と離れるのは寂しかったけれど、子どもの足でも会えない距離ではなかったし、その間もずっと電話や手紙でやりとりをしていたから我慢できた。

でも、一年も経たないうちにおばあさんが病気で亡くなってしまった。

唯一残っていた近い肉親がいなくなってしまって、優海はまたひとりになってしまった。

おばあさんが亡くなってすぐに何度も会いにいったけれど、優海はいつも気丈に振る舞って、笑顔で私を迎えてくれた。

しばらくして、優海は遠い親戚の家へと引き取られていった。

もう気軽には会えないくらいに遠くへ行ってしまって、すごく寂しかったけれど、それが優海のためだと思ったから我慢してした。

でも、優海はなぜか数ヵ月後にひとり鳥浦へ戻ってきた。

中学への進学を目前に控えた、小学六年生の冬だった。

それからずっと彼は、大好きだった家族と暮らした家で、ひとり暮らしている。

彼は私には戻ってきた理由を言わなかったけれど、噂好きな大人たちのおかげで事情は耳に入ってきた。

優海を引き取った親戚はどうやら、裕福だった両親の遺産と、事故の賠償金を相続することになった彼のお金を狙っていたらしい。

勝手にお金を使い込まれただけではなく、かなりひどい扱いを受けていたようで、鳥浦に帰ってきた優海は、ずいぶんやつれてしまった事故のあとよりもさらに痩せこけてしまっていた。


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