それでも僕は君を離さないⅢ
慎二は咲良を誘導して駅前の地下街へ進んだ。

地下にはこれでもかというくらい飲食店が並び、雑誌に掲載されたカフェの前には必ず列ができていた。

それは主に女性客だ。

二人はそれには目もくれず、静かで薄暗く例え多彩なメニューでなくても落ち着いた雰囲気の店で、ゆっくりコーヒーを飲みたいという希望はマッチしていた。

「こっちだ。」

慎二のリサーチに任せて正解だと店を目にする前にそう思いつつ、咲良は彼の半歩後ろを歩いた。

なぜなら並んで歩けるほど地下街の通路は広くなく、さらに待ち客が通路の両側に列をなしているとなると、普通に歩けないほどとてつもなく狭いのだ。

天井も低く長身の二人にとって余計狭苦しい行路となった。

「ここだ。入るよ。」

「OK。」

とあるコーヒーショップの幅の狭いドアをちょっと首をすくめて通り、店内で背筋を伸ばした。

「お二人様ですか?奥へどうぞ。」

「ありがとう。」

慎二は店員に丁寧に返事をして奥の席へ向かった。

すぐに氷水の入ったグラスと温かいおしぼりを運んできた先程の店員にオーダーした。

「ブレンドを二つ。」

「かしこまりました。」

二人は言葉を交わす前におしぼりで手を拭きグラスの水をあおった。

「ふぅー。」

「やれやれ。落ち着いたな。」

ガサガサと買ったバンダナをカバンから取り出して見せた慎二は、無言で柄違いの2枚を見比べた。

「へぇ、いいね。」

「だろ。」

「使うのか?」

「まさか。このまま持っていたいだけだ。」

「それ、わかる。」

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