それでも僕は君を離さないⅢ
一週間が経ち、樹里は貴彦へメールすることに慣れてきた。

単なる挨拶程度の極短いメールで済むからだ。

一方貴彦は樹里からのメールが頻繁になったはいいが、内容のない社交辞令のようなメールに気が滅入っていた。

この状況をなんとか打破したい一心で考え、ダメ元で翌日ランチしたいメールを送信した。

驚いたことにOKの返信メールを穴が開くほど見つめ、それが真実だとわかって、さっきまで沈んでいた気持ちがじわじわと浮き立ってくるのを、バクバクする自分の心臓の音で実感した。

頭の中では万歳三唱どころか、今すぐ空に向かって「ぅおー!」と雄叫びをあげたい気分になっていた。

今夜は眠れない夜になりそうだ。

まったくもって単純至極な男であった。

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