それでも僕は君を離さないⅢ
運転手にいつものフラワーショップへ寄るよう指示し、オーダー通りの花束を手にした橋爪は、近くの駅前で社有車を降り運転手を帰らせた。

タクシーに乗り換え目的地へ向かった。

都内のとあるマンションまでおもむき、かなり厳重なセキュリティであろうエントランスを我が家に帰ったような軽い足取りで進んだ。

オートロックを解除しエレベーターで7階に上がった。

さすがに玄関ドアは勝手に開けずベルを鳴らした。

「はい。」

インターフォンからしっとりとした音質の女性の声が聞こえた。

「私だ。」

カチッとドアロックが外れた。

橋爪は玄関から奥へと続くフローリング材の廊下を歩いた。

すると何やら良い匂いが鼻をくすぐった。

それはとろけるようにクリーミーなシチューの匂いであった。

リビングへ通じるガラスのドアを開けた。

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