それでも僕は君を離さないⅢ
咲良は樹里と並んで歩いた。

彼女は手強いな。

一般的なタイプと違い、律儀すぎて、つまり軽くない。

普通に会話が続かないなんて、今まで付き合った中にはいなかった。

相手に不自由しない自分にとって立花樹里は最難関の部類だと、咲良は一瞬で心に刻んだ。

直球で聞くしかないとも思った。

「ところで、立花さんは恋人いる?」

「いいえ、いません。」

「本当?こんなに可愛いのに?」

「近藤さんは彼女さんがたくさんいそうですね?」

「ぶぅー。ハズレだよ。俺は中身重視だから。遊んでるとよく誤解されるんだ。」

「大変失礼しました。」

結局彼女も男は外見から判断するのか。

だが、それはどの女も同じだったな。

「付き合っている人はいないの?」

「・・・・・」

返事がないということはいるってことか?

「ごめん、ごめん。困らせちゃったね。」

「私にもわからないんです。」

樹里はハタッと歩を止めた。

「どうした?何か悩んでる?」

「近藤さんは恋愛経験が豊富かと思いますが、私はないので上手くいかなくて。」

「はは~ん、好きな人がいるってことだね。」

妙な展開になってきたことに咲良はどうしたものかと思った。

さらに厄介なことに咲良はそんな彼女を放っておけなかった。

「俺でよければ相談に乗るよ。」

思わず口から出た言葉に咲良は自分で驚いた。

「本当ですか?」

「いつでもいいからメールして。」

「ありがとうございます。」

「改札口まで送るよ。行こう。」

「はい。」

さっきよりは少し元気になった彼女を間近に感じて、咲良はこれでいいのかもしれないと思った。

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