それでも僕は君を離さないⅢ
いつものエスカレーターが混んでいたため、咲良と慎二は手前にあるエレベーターに乗った。

そこそこの人数で上へ向かった。

エレベーターの中には知らない顔が多かった。

「チーフ、お早いですね。」

前に立った男が隣の女に言った。

「あら、そんなことないわ。朝一に目を通しておきたいものがあるのよ。」

その声にゾクッとした咲良は自分の斜め前に立っている声の主に視線を向けた。

かっこいい女だな。

と思った瞬間、全身がカアッと熱くなった。

何?

なんだ?

17階でドアが開いた。

慎二はサッサとエレベーターを降りたが、咲良は足が前に出なかった。

閉まりつつあるドアの隙間から慎二が何か言っている姿が見えた。

そうこうするうちに23階でドアが開いた。

かっこいいチーフと部下らしき男が降りた。

咲良は一人ドアが閉まったエレベーターの中でドンと壁にもたれかかり手すりを握った。

ヤバい。

心臓のドクドク音が止まらない。

俺は年上が好みだったことは一度もない。

とにかく17階まで下りないと。

ハッと気がついたらオフィスの自分の席に座っていた。

咲良はどうやってここまで来たのか全く記憶になかった。

これは相当ヤバいな。

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