それでも僕は君を離さないⅢ
世にも恐ろしいラッシュアワーで息も絶え絶えに帰宅した樹里は

熱いシャワーを丹念に浴びて風呂を出た。

冷蔵庫をのぞくと翌朝用の玉うどんしかなかった。

冷凍室には棒アイスとカレー用のナンがコチコチに凍っていた。

流しの下を開け常備品を見た。

みかんの缶詰がやたら大きくてげんなりした。

仕方なくクラッカーをかじって温かい紅茶で喉に流し込んだ。

もう今日は何もせずに寝てしまおうと決心し

スマホに起床時間をセットしようと画面を見たら

先程の多田さんから着信があった。

メールを開くと営業マンらしいお詫びが綴られていた。

律儀なタイプという印象があったが

つまりは付き合いたいという内容だとわかり

週末は寝ていたい性分の樹里はすぐの返信をとどまった。

とにかく明日の土曜日は静かに過ごすつもりだ。

一週間分の買い出しにも行かなければと思いながら

ベッドに横になったら数秒で寝入った。

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