それでも僕は君を離さないⅢ

「くそ、返信がない。頼む。俺からはもうメールできない。」

貴彦は残業で深夜に帰宅し

樹里から返信がない理由をあれこれ眠い頭で懸命に考えたが

どうにもならないため半分あきらめてベッドに潜り込んだら

彼女との対面に尋常でない緊張感を経験したためか爆睡してしまった。

目を覚ましたら翌日の昼近くになっていた。

がばっと起き上がりスマホをつかんだ。

「くそ、俺はなんてバカなんだ。」

着信は３時間も前だ。

樹里からのメールを凝視した。

「多田様、おはようございます。昨日はメールをいただきましてありがとうございます。充分にお詫びいただきましたので、こちらからは控えさせていただきます。週末はごゆっくりと休まれてください。失礼いたします。立花。」

「これだけ？そんなぁ。」

貴彦は恐らくはこの先数ヶ月は立ち直れないだろうと思い

途方に暮れてベッドに突っ伏した。

いかなるイケメンであろうと勝手に想い入れている女に冷たくされれば

心底凹むのは中身が普通の男である証拠だ。