たとえば、君と
「ん。」
肩に回した腕をゆっくり離す。
雪乃が顔を赤くするから、
こちらまでつられて赤くなりそうだ。
そういう意味で引き寄せたんじゃないけど。

何か、別の話題ないかな──なんて
アーケードの方に目をやった時、
降ろされた腕の服の袖を、
くいと引っ張られた。
一瞬、前に進む足が止まる。

「あ、ごめん。歩くスピードはや──」
言い終わる前に、雪乃は
手を繋ぎ、こちらの出方を伺うように
優しく握った。

「…人が多いので。」
言い訳のようにそう呟く彼女は
恥ずかしさからか目をそらしていた。
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