たとえば、君と
楽しい時間ほどすぎるのが早い。

最後のプログラムである
イルカショーが終わると
一斉に来館者が退場ゲートへと向かう。

この後、そのまま帰るか
どこかでご飯でも食べて帰るかは
決めていない。

どうしようか、なんて
考えていたところに
彼女の携帯が鳴る。

出ていいよ、と目で合図を送ると
すみませんと小さく呟いてから
電話に出た。

──はい。雪乃です。
え?えーと、学校の…
でも、まだ、そんなに遅くないし


特に聞こうと思っていたわけではないが、ちらほら耳に入る会話から推測するに彼女の親かららしい。

──また後で、連絡しますから!

少しきつい口調で、会話を断つように
言った後、彼女は電話を切った。

「お待たせしました。」
「大丈夫だよ。それより、親御さんから?」
「えぇ、そんなところです。」

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