たとえば、君と
素早く携帯で調べると
今から出れば9時には
彼女を家に帰せる。

「母が、心配性なんです。
気にし過ぎだって
いつも言うんですけど…。」

参っちゃいますよね、と
彼女は困ったような表情を浮かべる。
ひとり娘で箱入り娘。厳格なご両親。

きっと、あまり無茶をすると
怒られるだろう。

彼女の手を引いて歩き出す。
「帰ろうか。」
「電話のせい…ですか?」
「んー?いや。
寒くなってきたし。
あまり、女の子を夜遅くまで
連れまわすのは良くないでしょ。」

駅まで続くアーケードの
スポーツショップの前を通った時
彼女が少し立ち止まった。
「ごめんなさい、ここ見たかったですよね。」
「え?」

彼女の言葉にピンと来ず、
少し今日の記憶を辿る。
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