たとえば、君と
「じゃあ、俺のお願い聞いてくれる?」

気にしないで、と説得するより
こちらの方が彼女は聞く耳を持つだろう。

「はい!…なんでしょう?」
ちょっとした違和感を覚えながらも、
彼女はこちらをじっと見つめてきた。

「今度、俺と遊びにいきません?」
予想外の提案に、驚いた顔を見せる。

人混みで騒々しいはずの周りの音が
聞こえなくなる。
自分で言っておいて、
何、動揺しているんだろう。

背にして立っていた街時計が
八時を告げる鐘を鳴らす。

その音にハッとしたかのように
彼女の肩が小さく動き

「はい。」

という声が聞こえた。
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