婚約者はご主人様 1
そして今、私は東城家で坊ちゃん朝の支度をしている…のではなく、自分の支度をしている。
今日はお父様達が計画した、私と坊ちゃんのデートの日。
場所は大人気テーマパーク、「ウサミミランド」。
10:30、噴水広場で待ち合わせだ。
用意されさ服に着替え、一般人に紛れて電車に乗った。
(そういえば、坊ちゃんの気持ち聞いていなかったわね。もしかして、迷惑だと思っているとか…)
考え込みすぎて、気づいたらもうウサミミランドに着いていた。
時計を見ると、まだ10:02。
開園したてだ。
「時間まで座って待っていよう。」
私は噴水広場にあるベンチに腰掛け、瞳を閉じた。
爽やかな噴水の音は疲れていた私の心を癒してくれる。
ずっとこのままでいたいな、そう思った時だった。
「キミ、カワウイィィーネ!」
後から急に声を掛けられた。
びっくりしてハッと振り返ると、そこには金髪のチャラい男が2人立っていた。
「ねー、オレらとどっか行こうよ。」
と手首を掴まれた。
どうやらこれは、ナンパというやつらしい。
「えっと、連れがいるので。他を当たってください。」
キッパリと断ったはずなのに、
「そんなの嘘でしょー、誤魔化しても無駄だよー。ほら、一人じゃ寂しいじゃん?オレらと行こーよ。」
強い力で腕を引っ張られる。
(怖い…手を振りほどけない…!)
ギュッと目を瞑ったその時、
「おい、お前ら俺の女に何してんだ!」
聞き慣れた低音の声。
目を開けると、坊ちゃんが鋭い目つきでナンパ男を睨んでいた。
(坊ちゃん…!来てくれたんだ…)
男達は
「ヒイッ!」
「すいませんでしたー!」
と声を上げながら逃げていった。
「おい、大丈夫か?莉亜。」
「今…名前で…いつもは真城なのに…」
「そんなのどうでもいいだろ、まずは涙拭けよ。」
そう言ってハンカチを渡してくれた。
(私…泣いてたんだ…坊ちゃん、かっこよかったな)
「ありがとうございます、坊ちゃ…」
急に私の口を塞いで、
「なぁ、坊ちゃんって呼ぶのやめてくれないか、結月でいいから。」
と顔を赤らめてそう言った。私はうなずき、
「改めて、ありがとうございます、結月。」
と笑顔で言った。
「あと、助けるの遅くなってごめん。」
「そんなの、助けてくれただけでうれしいです。」
結月を見るだけで、声を聞くだけで、胸がドキドキする。
私、結月に恋してしまったかも…
「さぁ、行きましょう、結月。」
「ああ。」
私たちは手を取りながら歩き出した。