目眩がするような恋だった
格好つけるのが様になる、自分の外見をよく知っている男だった。


嫌味なくジャケットを着こなして、大きな手が色っぽくて。

口にする言葉は洗練されていて、少し鋭く、ときたま優しい。


褒め言葉はいつも的確で、色やものの名前をよく知っていて。

選ぶ店も時間も趣味がよくて。


して欲しいことをして欲しいときにきちんとする手慣れた仕草が過去を思わせた。


無理なく上品で、隣に並ぶと浮き足立つような不思議な影のある男。


そのくせ手を繋ぎたいときは照れ笑いをする。


すべてが美しかった。完璧だった。理想だった。


まるで何もかもを計算しているみたいだった。実際、多分計算していたんだろう。


そうして私は、そういう密やかな派手さに惹かれたのだ。
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