桜色の雪が降る
掴みきれぬ心
第11話 掴みきれぬ心
「他のやつが来たらぶん殴る！！」
立花の轟轟たる叫びに男子たちは震え上がる。
立花にアルンツクのＣＭをやらせても違和感は無いだろう。
とはいいつつ、内心感謝をしていた。
彼女が脅しをかけなかったら話しを聞いた全員が付いてきたことだろう。
部屋へ戻ると当然の流れだが、僕と七海さん、そして立花の話になった。
その話が気になるのはナンパ男たちの班も同じだ。
彼らの部屋に原西、智樹、酒井の３人が向かい、断固として動かない僕は広い部屋で１人になった。
特にすることも無いがなんとなくでスマホを開くと、小雪からのメッセージが届いていた。
小雪 : すっごい綺麗！羨ましいな～！あと早くもとくんと話したい
「早くもとくんと話したい」
声に出して読む。
なんと素晴らしい響きなのだろうか。
おおジーザスと叫びたくなる。
もと : ありがとう！僕も話したいよ。そうだ、今話す？暇なんだよね
送信した数秒後、skypa特有の波線が表示される。
小雪 : 今はだめだなー……ごめんね！
もと : わかった。また今度ね
窓を開けて深く息を吸う。
彼女にもこの景色をリアルタイムで見せてあげたかった。
ホテルから見える景色はとても自然的な美しいものだった。
２人で話しながら見れたらどんなに素敵な思い出になるだろうかと悔やまれる。
真っ黒な夜空に、目の前に広がる海と僕は飲み込まれていくようだ。
所々に突き出る岩石がここが地表であることを教えてくれる。
また、大きく深呼吸をする。
時計を見ると針は既に50を過ぎており、次の５を刺そうとしていた。
焦る僕とは裏腹に無関心に動き続ける時計を恨めしく思う。
丁度廊下へ出ようとしたところで厄介者達が帰ってきた。
「ついていけないのが残念だよ」
「はいはい」
班員に見送られ、広間へ向かう。
今度のエレベーターは僕だけだった。
３階、２階と数字が下っていくうちに胸の鼓動が高鳴る。
何を話すかとか、何をするとか一切聞かされていないが、それがまた僕の不安を煽る。
何故か悪いことをしている気分だった。
エレベーターを出ると向かい側にカウンターがあり、カウンターを前に左手にソファーが並んでいる。
そのソファーの隅に見覚えのある小さな体が見えた。
「あ……あの……」
こちらを振り返る。
「も……元利くん……！」
なんということだ。
立花さんの背が縮み、さらには眼鏡をかけているではないか。
「元利くん？」
「へ？ああ……」
僕が微妙な反応をすると、彼女は眼鏡をとって
「わたしよ」
と言った。
「あ、いや。誰かわからなかったんじゃないんだ。眼鏡に驚いたのと、立花に呼ばれてから」
「眼鏡……変かしら」
「ううん！とっても似合うよ」
その言葉を言った瞬間とてつもない嘔吐感が押し寄せてきた。
ひどく気分が悪い。
「どうしたの？やっぱり似合わないかしら」
「いや……食べたものが悪かったみたいだ。ちょっと気分が良くないだけ」
「それは大変だわ」
彼女は普段のおっとりさを忘れるくらいの素早さで立ち上がり、僕の方へ駆け寄った。
「大丈夫？」
俯く僕に下から彼女が顔を覗かせる。
なんという可愛さなのだろうか。
眼鏡をかけていることによって、昼とは違う魅力が漂っている。
そして、僕の心を抜群に突き刺したのはシャンプーの匂いだった。
僕の気分が悪くなかったらときめいていてもおかしくない程に今の彼女は魅力的だった。
しかし、彼女の魅力を知れば知るほど気持ち悪さが増してくる。
一体どうしたというのだ。
彼女の手が僕の肩に触れた。
「大丈夫だから」
そう言って手を払い除けてトイレに駆け込んだ。
何も出ない。
上からも下からも特に何が出るということは無い。
しかし、何故か吐き気がする。お腹も痛い。
暫くしてトイレから出ると彼女の姿が見えなかった。
僕を心配する彼女の手を振り払ってしまったのが原因だろうか。
そうであれば、きっと怒っているに違いない。
一晩寝ればこの謎の吐き気も治るだろう。
そうしたらちゃんと謝罪をして今日の用事を聞いておこう。
部屋に戻ると全員が目を輝かせて待っていた。
あったこと全てを話す。
「七海さんがいたの！？」
「でも、気分が悪くてトイレへ駆け込んだ！？」
「そして逃げられた！？」
「ちょ、逃げられたは言い過ぎじゃない？」
みんなと話しているうちに吐き気は治まっていた。
しかし、七海さんのことを思い出すと心にずっしりと重いものがのしかかるような気分になった。
小雪と話せなかったのも心残りだ。
あと２日間も僕は持つのだろうか。もしかしたら体調不良でホテル待機だろうか。
そんな不安が脳裏をよぎる。
様々なことを抱えながらも、みんなの前では笑ってみせた。
せっかくの修学旅行なのだから楽しまなくては。
深夜２時を回り、そろそろ寝ようとなった。
「つかれたー。明日起きれない」
智樹がベッドに倒れ込む。
「誰だよオールだとか言ってたヤツは」
まだ余裕そうな酒井が毒を刺す。
「慧くんでーす」
「僕は何も言ってない」
「もうなんでもいいから寝ようぜー」
そういう本人は電気を消そうとしない。
それを見た原西が気を利かせて電気を消してくれた。
「じゃあみんなおやすみ」
原西がそう言ったその刹那、廊下で女子の叫び声が聞こえた。
何事かと外へ出ると、女子２人が顔を青くして唇を震わせているのが目に入った。
その２人に多くの女子が駆け寄っていく。
彼女らに事情を聞くと、２人とも決まって
「顔が走ってきた」
と呟くだけだった。
「他のやつが来たらぶん殴る！！」
立花の轟轟たる叫びに男子たちは震え上がる。
立花にアルンツクのＣＭをやらせても違和感は無いだろう。
とはいいつつ、内心感謝をしていた。
彼女が脅しをかけなかったら話しを聞いた全員が付いてきたことだろう。
部屋へ戻ると当然の流れだが、僕と七海さん、そして立花の話になった。
その話が気になるのはナンパ男たちの班も同じだ。
彼らの部屋に原西、智樹、酒井の３人が向かい、断固として動かない僕は広い部屋で１人になった。
特にすることも無いがなんとなくでスマホを開くと、小雪からのメッセージが届いていた。
小雪 : すっごい綺麗！羨ましいな～！あと早くもとくんと話したい
「早くもとくんと話したい」
声に出して読む。
なんと素晴らしい響きなのだろうか。
おおジーザスと叫びたくなる。
もと : ありがとう！僕も話したいよ。そうだ、今話す？暇なんだよね
送信した数秒後、skypa特有の波線が表示される。
小雪 : 今はだめだなー……ごめんね！
もと : わかった。また今度ね
窓を開けて深く息を吸う。
彼女にもこの景色をリアルタイムで見せてあげたかった。
ホテルから見える景色はとても自然的な美しいものだった。
２人で話しながら見れたらどんなに素敵な思い出になるだろうかと悔やまれる。
真っ黒な夜空に、目の前に広がる海と僕は飲み込まれていくようだ。
所々に突き出る岩石がここが地表であることを教えてくれる。
また、大きく深呼吸をする。
時計を見ると針は既に50を過ぎており、次の５を刺そうとしていた。
焦る僕とは裏腹に無関心に動き続ける時計を恨めしく思う。
丁度廊下へ出ようとしたところで厄介者達が帰ってきた。
「ついていけないのが残念だよ」
「はいはい」
班員に見送られ、広間へ向かう。
今度のエレベーターは僕だけだった。
３階、２階と数字が下っていくうちに胸の鼓動が高鳴る。
何を話すかとか、何をするとか一切聞かされていないが、それがまた僕の不安を煽る。
何故か悪いことをしている気分だった。
エレベーターを出ると向かい側にカウンターがあり、カウンターを前に左手にソファーが並んでいる。
そのソファーの隅に見覚えのある小さな体が見えた。
「あ……あの……」
こちらを振り返る。
「も……元利くん……！」
なんということだ。
立花さんの背が縮み、さらには眼鏡をかけているではないか。
「元利くん？」
「へ？ああ……」
僕が微妙な反応をすると、彼女は眼鏡をとって
「わたしよ」
と言った。
「あ、いや。誰かわからなかったんじゃないんだ。眼鏡に驚いたのと、立花に呼ばれてから」
「眼鏡……変かしら」
「ううん！とっても似合うよ」
その言葉を言った瞬間とてつもない嘔吐感が押し寄せてきた。
ひどく気分が悪い。
「どうしたの？やっぱり似合わないかしら」
「いや……食べたものが悪かったみたいだ。ちょっと気分が良くないだけ」
「それは大変だわ」
彼女は普段のおっとりさを忘れるくらいの素早さで立ち上がり、僕の方へ駆け寄った。
「大丈夫？」
俯く僕に下から彼女が顔を覗かせる。
なんという可愛さなのだろうか。
眼鏡をかけていることによって、昼とは違う魅力が漂っている。
そして、僕の心を抜群に突き刺したのはシャンプーの匂いだった。
僕の気分が悪くなかったらときめいていてもおかしくない程に今の彼女は魅力的だった。
しかし、彼女の魅力を知れば知るほど気持ち悪さが増してくる。
一体どうしたというのだ。
彼女の手が僕の肩に触れた。
「大丈夫だから」
そう言って手を払い除けてトイレに駆け込んだ。
何も出ない。
上からも下からも特に何が出るということは無い。
しかし、何故か吐き気がする。お腹も痛い。
暫くしてトイレから出ると彼女の姿が見えなかった。
僕を心配する彼女の手を振り払ってしまったのが原因だろうか。
そうであれば、きっと怒っているに違いない。
一晩寝ればこの謎の吐き気も治るだろう。
そうしたらちゃんと謝罪をして今日の用事を聞いておこう。
部屋に戻ると全員が目を輝かせて待っていた。
あったこと全てを話す。
「七海さんがいたの！？」
「でも、気分が悪くてトイレへ駆け込んだ！？」
「そして逃げられた！？」
「ちょ、逃げられたは言い過ぎじゃない？」
みんなと話しているうちに吐き気は治まっていた。
しかし、七海さんのことを思い出すと心にずっしりと重いものがのしかかるような気分になった。
小雪と話せなかったのも心残りだ。
あと２日間も僕は持つのだろうか。もしかしたら体調不良でホテル待機だろうか。
そんな不安が脳裏をよぎる。
様々なことを抱えながらも、みんなの前では笑ってみせた。
せっかくの修学旅行なのだから楽しまなくては。
深夜２時を回り、そろそろ寝ようとなった。
「つかれたー。明日起きれない」
智樹がベッドに倒れ込む。
「誰だよオールだとか言ってたヤツは」
まだ余裕そうな酒井が毒を刺す。
「慧くんでーす」
「僕は何も言ってない」
「もうなんでもいいから寝ようぜー」
そういう本人は電気を消そうとしない。
それを見た原西が気を利かせて電気を消してくれた。
「じゃあみんなおやすみ」
原西がそう言ったその刹那、廊下で女子の叫び声が聞こえた。
何事かと外へ出ると、女子２人が顔を青くして唇を震わせているのが目に入った。
その２人に多くの女子が駆け寄っていく。
彼女らに事情を聞くと、２人とも決まって
「顔が走ってきた」
と呟くだけだった。
