iNG 現在進行形の恋【濃縮版】
「……俺、さっき鈴宮に振ってもらおうと思って訊いたんだ。どっちを選ぶのかって」

「え」

私はその台詞に驚いて坂本君へと顔を向けた。

「仁と鈴宮を見て、誰も入り込む隙が無いって気付いたから」

坂本君は笑ってはいるが、苦しそうに顔を歪めている。

「仁は鈴宮が階段から落ちてからずっと錯乱してた。鈴宮に自分を一人にするなって目を開けろって、ずっと手を握りながら鈴宮の名前を呼びかけてた」

坂本君のその言葉を聞いて涙が更に溢れ出す。


あれは夢じゃなかった。

苦しそうな声で誰かがずっと私の名前を呼んでた。

あれは目を開けない私を心配していた仁が、ずっと私を呼び掛けていたんだ……。
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