一途な溺愛プリンスはベールアップを譲れない
「……石神さん、ちょっと」


 後部座席から真壁さんが声をかけた。

 私に聞かれたくない話なのか、耳元でひそひそと囁くように話している。


 石神さんの眉間のしわが深くなり、不快そうにチッと舌打ちした。

 ……何かよくない状況になったのだろうか。


「……あなたの元彼は、たいそう良い趣味をお持ちのようですね」


 我慢ならないというように、吐き捨てた。

 真壁さんが、黙って聞いている。


「警察の存在に感づかれたようです。彼らをさがらせないと、伶の見るに堪えない姿を全世界に配信すると」

 ――見るに堪えない、姿……?

「それって、どんな……?」

「さあ。私も見ていませんから詳しくはわかりません。でも、」



「あなたの動画を撮った彼なら、きっと吐き気がするほど胸糞の悪いものであることが……、容易く想像できるでしょう?」




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