一途な溺愛プリンスはベールアップを譲れない

屈辱

 人生のほとんどを

 ありとあらゆるカメラの前に捧げてきたが


 こんなにも不快なシャッター音と

 フラッシュを浴び続けたのは

 初めてだ。


 頭がおかしくなる。


 ……いや、

 もうとっくに、

 おかしくなっているのかもしれない。




「……ねーぇ、気持ちよくないのぉ?」

「なんだコイツ、インポ野郎か?」

「全ッ然、勃たねぇじゃんwww」



「……なあ、なんとか言えよ」


「『抱かれたい男No.1』さん」



 下品で頭の悪そうな笑い声に、胃の底からむかつきが止まらない。


 ムカつくにはムカつくが、トランクに閉じ込められるよりかは遥かにマシだった。



 “この程度のこと”くらい、


 なんてことはない。






 昔、彼女が言っていたことを急に思い出す。


 『自分がどんな風に撮られているか、見える』と。




 地獄だな、と思った。




 知りたくない。


 今の自分が、どんな姿をしているかなんて。



 知られたくない。



 彼女にだけは。






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