一途な溺愛プリンスはベールアップを譲れない
 石神さんと契約しているボディーガード集団が集合した。

 その他、私の知る由もないような、権力を持った大人たち。

 強行突破を決めた石神さんが、私は残るようにと言った。

 当然私も行くと言いかけたが、

「万が一、中にいる人間を逃がしたとき、あなたがそこにいれば真っ先に狙われて人質にされる」

 今までにないくらい心配の色を浮かべた静かな口調で言ったので、真壁さんとおとなしく待機することになった。


 石神さんたちの背中を見送ってから、どのくらい時間が経っただろう。

 とても、とても長く感じたが、インカムで連絡を取っていた真壁さんが、宝来寺さんの無事を私に伝えた。

 主犯は麻生流司、他4名。

 全員ボディーガードたちに取り押さえられ、警察に引き渡されるらしい。


 待機していた別のフロアの通路から、パトカーが数台停まったのが見える。

 警察が、来た。



『――ごめんね、雫』


 先程まで電話越しに聞こえていた彼の声が、耳に残っている。

 初めて謝った彼は、……泣いていたのだろうか。



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