一途な溺愛プリンスはベールアップを譲れない

王子様から恋人へ

 すべての記憶が戻ってから、

 パズルのピースをひとつひとつはめるように、

 自分の過去が整えられていく。


 “自分の過去だ”という実感はまだ伴わないけれど、

 以前のような空虚な不安感に襲われることはない。


 幼い頃の自分の映像や写真を見たことで、

 本当は“覚えていなかった”のに

「これは確かにあったことなのだ」と自然と信じるように、

 膨大な記録も流れこむままに受け入れることができていた。


 中には思い出したくなかった記憶も、

 信じたくなかった記憶もあったけれど……


 私が忘れたいと願うなら、

 その瞬間に考えないようにすることができる。

 自然と記憶から薄れていくことも、あるかもしれない。


 そうやって、コントロールできるようになったんだ。

 今の、私は。



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