一途な溺愛プリンスはベールアップを譲れない
「あ……え……」
楽屋のある廊下はこちら側ではないはず。どうして。
わあ、近い。
本物だ。
整った顔。
背が高い。
顔小さい。
手足長い。
肌白い。
瞳が大きい。
まつげ長い。
息をのむ美しさとは、よく言ったものだ。
スゥーーっと体内に酸素が入ったかと思ったら、入りきったあたりでキュッと止まる。
視覚的情報が滝のようになだれこみ、尋常じゃないほど鼓動が早くなる。
一瞬目が合えばいいな、どころじゃない。
こちらを見ている。
宝来寺伶が、わたしを見ている。
カッと体温が急上昇した。
目を合わせると吸い込まれてしまいそうだ。
まるで顔はあるのに顔がないみたいな名前のキャラクターのような、声にならない声しか出せなくなっていた。
「……あのーすみません、迷ってしまいまして」
付き人のひとりが頭を下げる。
暗にそこを退いてほしい、ということだろう。
狭い通路に予備の機材を置いていたため、わたしで塞いでしまっている。
「あ、はい、ごめんなさい。どうぞ」
時間にして数秒の出来事のはずだが、ずいぶん長い間息が止まっていたような錯覚に陥った。
付き人さんには失礼かもしれないが、同じ人間に話しかけられてようやく戻ってこられた、という感覚だ。
静かに息を整えないと、鼓動の音がみんなに聞こえてしまいそうで。
冷たい壁に背中を預け、自分の足元を見つめた。
ひとり、ふたり。さんにん。
4人めの靴が通り過ぎる。
刹那、ふわっといい匂いが漂った。
深い夢に落ちてしまいそうな、優しくも儚い、もっと欲しくなるような香り。
つられるように顔を上げると、立ち止まっている人がいて。
宝来寺伶が、振り返ってこちらを見ていた。
あ、また、目が……。
“持っていかれる”
視線が、自然と、彼に集まっていく。
芸能人オーラというのだろうか。
どちらかというと、2次元に近いかもしれない。
Live2Dでぬるぬる動く、2次元イケメン。
「……人違いかもしれないんだけど」
「萩元、雫、さん…………?」
楽屋のある廊下はこちら側ではないはず。どうして。
わあ、近い。
本物だ。
整った顔。
背が高い。
顔小さい。
手足長い。
肌白い。
瞳が大きい。
まつげ長い。
息をのむ美しさとは、よく言ったものだ。
スゥーーっと体内に酸素が入ったかと思ったら、入りきったあたりでキュッと止まる。
視覚的情報が滝のようになだれこみ、尋常じゃないほど鼓動が早くなる。
一瞬目が合えばいいな、どころじゃない。
こちらを見ている。
宝来寺伶が、わたしを見ている。
カッと体温が急上昇した。
目を合わせると吸い込まれてしまいそうだ。
まるで顔はあるのに顔がないみたいな名前のキャラクターのような、声にならない声しか出せなくなっていた。
「……あのーすみません、迷ってしまいまして」
付き人のひとりが頭を下げる。
暗にそこを退いてほしい、ということだろう。
狭い通路に予備の機材を置いていたため、わたしで塞いでしまっている。
「あ、はい、ごめんなさい。どうぞ」
時間にして数秒の出来事のはずだが、ずいぶん長い間息が止まっていたような錯覚に陥った。
付き人さんには失礼かもしれないが、同じ人間に話しかけられてようやく戻ってこられた、という感覚だ。
静かに息を整えないと、鼓動の音がみんなに聞こえてしまいそうで。
冷たい壁に背中を預け、自分の足元を見つめた。
ひとり、ふたり。さんにん。
4人めの靴が通り過ぎる。
刹那、ふわっといい匂いが漂った。
深い夢に落ちてしまいそうな、優しくも儚い、もっと欲しくなるような香り。
つられるように顔を上げると、立ち止まっている人がいて。
宝来寺伶が、振り返ってこちらを見ていた。
あ、また、目が……。
“持っていかれる”
視線が、自然と、彼に集まっていく。
芸能人オーラというのだろうか。
どちらかというと、2次元に近いかもしれない。
Live2Dでぬるぬる動く、2次元イケメン。
「……人違いかもしれないんだけど」
「萩元、雫、さん…………?」