一途な溺愛プリンスはベールアップを譲れない
 今回のグラビアは“大人の恋人”特集。

 人気俳優やアイドルを集めて、

 “もし彼が恋人だったら……” と、

 大人女子の妄想をかきたてるものに仕上げるのが我々の使命だ。


 モデルひとりひとりに“純愛”、“いけない恋”などテーマが与えられている中、

 宝来寺 伶に与えられたテーマは、

 “溺愛”。


 モニターに映る彼は、相手を愛おしく想うあまり、自分自身を壊してしまいかねない危うさのある色気を醸し出していた。

 儚さ。切なげ。

 一途な想いが伝わる透明感のある表情に、世の女性たちは十二分に満足してくれるだろう。

 足りない部分などなかった。だからこそ、塚本さんも戸惑うのだろうが……。

 足りないもの、というより、あとほんの少し付け足すとするなら……


「うーん……ちょっと血液の勢いが足りない感じなんですかね」

「ほぉ」

「溺れるような盲目的な愛おしさなら、もっと前に動いていてもいいのかなって。今は一歩ひいちゃってるというか。それはそれで健気でもあるんですけど……」


「……誰のせいだと思ってるの?」


 凛と冷たい声に遮られ、固まった。

 こちらを見上げる落ち着いた瞳に責められているようで、身体が委縮する。


 誰のせい……?

 私のせい、とでも言いたいんだろうか。


「え、えーと……宝来寺さん、それは」

 一体どういう意味でしょうか、と聞きかけて、朝の出来事を思い出す。



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