一途な溺愛プリンスはベールアップを譲れない
 子どもの頃に参列した結婚式。

 新郎が待つバージンロード。


 新婦が父親と入場する前に、バージンロードを花びらで彩るのが、私たちに与えられた役目だった。

 新婦とお揃いのドレスを着て、可愛い花婿の手を握り、今となっては誰の結婚式だったかも覚えていないけれど、しっとりとした花びらの冷たさをなぜか切なく感じたことは覚えている。


『……ねえ、おねえちゃん。どうして“しんろう”は、しんぷさまといっしょにまってるの?』


 子どもの私には、少し難しい質問だった。


――うーん、わかんないけど、お父さんから新郎にバトンタッチ、みたいな……


『ばとんたっち?』


――結婚したから、お父さんとじゃなくて、新郎と一緒に生きていくよって


『えー!? じゃあぼく、むこうでまってなきゃ! おねえちゃん、はやくきてね!!』


 言うが早いか、可愛い花婿は、突然神父と新郎に向かって走り出してしまった。


 神父と新郎は目をまんまるにし、

 大人たちは、微笑ましく笑っていた。


 子どもの私は予想外の展開に焦ったが……、

 ――ちょうどその時扉が開いて、新婦が入場した。


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