一途な溺愛プリンスはベールアップを譲れない
「えっと……」

 問1は、「どうしてここにいるのか」だったっけか。


「あの、今日は、カメラマンの塚本先生のアシスタントで」

「……うん」


 私の声を噛みしめるように彼が頷く。

 どうしてここにいるのかなんて、本当はどうでもいいようだった。


「…………」


 沈黙に戸惑う。

 抱きしめた腕は、まだまだ離してくれそうにない。


 ええと、ええと、問2は……「今までどうしていたのか」。

 ……今まで、とは。


「あの、今までどうしていたか、なんですけど」

「……うん」

「今までというのは、その……?」

「俺たちが、最後に会ってから」



 “俺 た ち が 最 後 に 会 っ て” から……?


 ……まずい。

 直感的に、この後起こる悲劇を察した。

 これはもしかしなくても、私が“また”忘れているパターンなのでは……?


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