一途な溺愛プリンスはベールアップを譲れない
「あ、あの、もちろん宝来寺さんのことは、存じ上げてましたよっ」

 個人的には、存じ上げていたというレベルではない。

 ファースト写真集から最新のフォトブックまですべてコンプリートしている。

 彼が載るとわかれば、普段読まないメンズ雑誌も買う。

 シンプルな大人女子の部屋を意識したインテリアの一角に、宝来寺伶コーナーがある。

 ドラマも映画も、バラエティもドキュメンタリーもお目当ては全部……。


 大好きなのだなぁ、としみじみ思う。
 
 こんなに近くにいて、会話を交わしているだなんて、まだ信じられない。

 急に胸にこみあげる想いに、涙が出そうになって。


「テレビや雑誌で拝見して、ずっと憧れで……ファンです!」


 ありきたりな言葉。

 それだけ言うのが、精一杯だった。




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