一途な溺愛プリンスはベールアップを譲れない

もっとちょうだい



――俺にキスしてよ。最高にエロいやつ。



――俺を、その気にさせてみて。



 ベッドがまた軋む。

 人ひとり分空いていた2人の距離を彼、宝来寺伶は詰めて座り直した。

 距離が……近い。

 右の手の甲に、彼の左手が重なり、滑るように優しくなぞられた。

 とてもひんやりとしている。

 末端冷え性なのか、私が、今にも蒸発しそうなせいなのか。


「つ、つ、塚本さーーん」


 これ以上の誘惑には耐えられそうもない。

 毛穴という毛穴から蒸気が吹き出しそうなくらい、体が熱い。

 ワガママ王子に振り回され、からかわれているのだ。

 恩師に助けを求めると、思いのほか真面目な表情で私たちを見つめていた。


「んあ? どうしたの雫ちゃん」

「どうしたのって、き、き、キスしてとか……」


 そうだ、おかしいに決まってる。

 相手が宝来寺 伶じゃなければ、こんなのとっくにセクハラだ。

 今朝から色々ありすぎて、常識的な判断力が鈍っている気がしてならない。



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