一途な溺愛プリンスはベールアップを譲れない
「んー、いいんじゃない? キスしてあげれば」

「!?」

「伶くんが嫌がる雫ちゃんに無理やりするってんならさすがに問題あると思うし、俺も止めるけど~」

 ――待って。

「雫ちゃんが嫌ならしなけりゃいいし~」

 ――待て待て待て。

「どっちでもいいよ、俺は。伶くんがその気になってくれるなら」


 ――そうだった。

 この人、いい写真が撮れれば何でもアリの人だった。


 どこまでもゆる~く掴みどころのない恩師に期待してはいけなかったと、跪き頭を垂れる。

 袖口がツンツンと引っ張られた。

 いたずらな子猫のような瞳が、私を取り込もうとしている。


「教えてよ、アシスタントさん」


「溺れるような盲目的な愛おしさってやつ」
 

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