一途な溺愛プリンスはベールアップを譲れない
 彼の舌は、驚くほど柔らかかった。

 ゆっくりと絡まる舌に、洗脳されそうになる。

 また、じゅわりと熱いものが身体の奥から生まれた。


 ……もう、どうなってもいい、かな。


 私の身体は抵抗することもできない間に陥落し、彼の支配下に置かれていた。

 唾液が出るたびに舌ごと吸い取られ、味わうようにじっくりと飲みこまれる。

 時折漏れる彼の吐息は低く、何かを抑えるように苦しげで、こちらも辛くなった。


 もっと、もっと欲しい。


 私を構成する約37兆の細胞すべてが、彼を求めていた。

 もっと触れたい、もっと触れてほしいと求め、焦がれている。

 もっと深くまで侵されたい。

 全身で溶け合って、混じり合って、ひとつになりたい。


「なんて顔、してんの」


 熱っぽい瞳で吐息まじりにそう言われ、意識が切り替わる。

 ファインダーを通して見えた自分は、蜂蜜のようなとろみを帯びた瞳で、頬も上気していた。

 その気にさせられたのは、私の方だ。

 恥ずかしくて、顔を背ける。


「だーめ。逃がさない」


 言葉通り、彼の唇が追いかけてくる。

 これ以上されたら、本当に……、したくなってしまう。

 彼の体に触れたい。強く抱きしめられたい。

 じゅわじゅわとにじみ続けた熱いものはとっくに私の身体を満たし、あふれ出さないように留めるので精一杯だった。

 触れたい。触れてほしい。つながりたい。ひとつになりたい。

 
 もう、限界。

 迫りくるその時を感じ、きゅっと強く瞼を閉じた刹那。


 ピピピっという電子音と共に、強い光が瞬間的に放たれた。

 ストロボだ。


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