一途な溺愛プリンスはベールアップを譲れない
 反射的に光の出どころを探す。

 塚本さんが、カメラを構えてファインダー越しに私たちを見据えていた。





 ――あ、カメラ…………。




 世界が、まわる。

 私は一歩も動いていないはずなのに、めまぐるしく、グルグルと周囲の景色に取り囲まれる。

 子どもの頃、近所の子どもと遊んだ“かごめかごめ”のように。

 世界が私だけを残して、まわり……


 猛烈な吐き気がした。

 電波障害が発生しているテレビの映像のように、視界がびりつく。

 ぐるぐるまわる景色の中で、サブリミナル効果を思わせるような、今一瞬見えたかもしれない、と感じる程度の映像が挿し込まれる。

 薄暗い部屋。

 中年の男性が、複数人こちらを覗き込んでいる。



 ああ、ダメ、……だ。



 こうなってしまうともう、自分自身ではどうしようもない。

 怖い夢が始まって、これは夢だとわかっているのに、目を覚ますことができないように。


『しずくおねえちゃん』


 大福もちのようなほっぺのあの男の子。

 呼んでいる? 私を……

 どこかに、連れていこうというのだろうか。


 暗くて、見えない……。







 私の意識は、まわる世界に別れを告げた。



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