一途な溺愛プリンスはベールアップを譲れない
 自宅には、自分が写っている雑誌や切り抜き、DVDが山のようにあった。

 赤ちゃんの頃からキッズモデルとしての活動をしていたらしく、それこそ15年分の記録が残っている。

 あの時私は、自分に1番近いと思われる、当時発行されたばかりのティーン向け雑誌を手にとった。


 流行りの洋服に身を包み、プチプライスのメイク用品や雑貨に囲まれ、ひょうきんな顔でポーズをとる自分の姿。

 同年代と思しきモデルと仲良さそうに手をつなぎ、楽しそうに視線を交わしているが、このモデルには見覚えがない。

 『萩元しずくチャン』と書かれた自分は、確かにどれも自分と瓜二つの顔をしているが、どれを見ても自分だとは思えなかった。

 自分とまったくおんなじ顔をした、赤の他人。

 その方が、自分だと言われるよりもしっくりきた。



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