一途な溺愛プリンスはベールアップを譲れない
 かつて愛し合った彼は、別れを絶対に受け入れなかった。

 別れるというのならその動画をネット上で拡散すると言う。

 初めは冗談だと思い、本気にしなかった。

 彼からの電話もメールもすべて無視して、関係を断ち切ろうとした。

 そろそろ、諦めてくれるだろうかと思っていたある日。

 URLだけが貼られたメールが届き、リンクを開いて驚愕した。


 そこはいわゆるアダルト動画の配信サイトで、顔と局部にモザイクがかけてあるものの、見る人が見れば、すぐに私だとわかる動画が配信されていた。

 再生回数はすでに数百万回にものぼり、いいねと思しき親指マークの隣に数千件の数字と、日本語のものだけでなく外国語のコメントがずらりと並んでいる。


 これだけの人が、私の裸が写った動画を見た……?

 気が遠くなりそうだった。


 極めつけは、投稿主のコメントだ。




 『次は、モザイクかけないからね』






 ――背筋が凍った。



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