一途な溺愛プリンスはベールアップを譲れない
 麻生の要求に従えば、私の記憶のないうちに、また、動画を撮られているかもしれない。

 悪循環だとわかっている。

 それでも、こんな動画を撮らせたことのある女だと思われたくなくて、誰にも言えずにいた。

 相談したことで、この動画が目に触れてしまうかもしれない。

 警察にも、家族にも、主治医にも、仲の良い友人にも、絶対に知られたくない。


 そうしているうちにも、ネット上で拡散され続け、動画の再生回数は上がる。

 早く何とかしなくてはと思っていたが、その一歩が踏み出せずにいた。 


 もし、もし次に付き合う人に、このことが知られたら。

 軽蔑されるだろう。

 淫乱な女だと、呆れられるだろう。


 絶対に嫌われる。

 そう思うと、恋愛にも積極的になれなかった。

 
 結婚なんて、夢のまた夢だ。


 もし、万が一にも、動画のことを受け入れてくれる人が現れたとしても。

 やっぱりその人とも、愛し合う記憶は持てないのだ。


 とても、寂しい。


 とても、寂しかった。




< 45 / 122 >

この作品をシェア

pagetop