一途な溺愛プリンスはベールアップを譲れない
 聞くところによると、新婦の父親がアパレル業界のお偉いさんらしい。

 可愛い愛娘の結婚式だもの、豪華にお祝いしてあげたいと思ったに違いない。至る所に費用がかかっているのがよくわかる。

 関係者もアパレル業界の人間が多いのか、個性豊かでお洒落な装いのゲストが多く参列していた。


 有難くご相伴にあずかり、こだわって作られた料理をちびちび堪能していると、近くから幼い子どもの笑い声が聞こえてきた。

 辺りを見まわすと、満開に咲いたツツジの生垣と生垣の間に、幼い男の子と女の子が座りこんでいる。

 フラワーシャワーで使った花びらを集めてきたのだろうか。

 バラの花びらと思しき色とりどりの花びらを並べて、お店やさんごっこをしているようだった。


――撮りたい。


 カメラマンの本能が疼いた。

 すぐさまカメラを持ち、静かに、気配を消しながら別の生垣に移動する。

 彼らに気づかれないように姿勢を低くしてカメラを構え、ピントを合わせた。

 隠し撮りと言われてしまえばそれまでなのだが、カメラの前で作った笑顔ではなく、自然な表情を残しておきたい。


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