一途な溺愛プリンスはベールアップを譲れない
 しばしの沈黙の後。

 気まずい間を破ったのは彼だった。


「……今日は、覚えてたんだ。俺のこと」


 見上げられた瞳にドキリとする。

 先日のキスのことが、じゅわりとした熱を持って思い出されてしまった。


「あ、あ、あの、先日は、失礼しました。というか、どうもお世話になりまして……」

「……いえいえ、こちらこそ、大変お世話になりました」


 大の大人2人が、生垣の陰に隠れるように膝を抱えて、ありきたりなビジネス会話を繰り広げている。

 そんな滑稽な場面があっただろうか。

 妙なやり取りに気まずさが増す。



 また、沈黙を破ったのは彼の方だった。


「……ごめんね」


「……その、『キスしろ』なんて言って」



「ちょっと、というか……かなり、調子に乗った」


「ごめんなさい」




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