一途な溺愛プリンスはベールアップを譲れない
 前髪の一部が、はらりと顔に垂れた。

 窮屈そうにたたまれた長い脚を抱えて、彼は自分の鼻を膝に近づける。

 反省、しているのだろうか。

 それとも、照れている……?


 いずれにしても、意外な反応だった。

 伏し目がちな表情が少年らしく見えて、ドキッと胸がときめく。


「い、いやいや~、私なんかがお役に立てたんなら、お安い御用で」

 ただならぬ雰囲気に、つい、ごまかしてしまった。

 あんなに真摯に謝ってくれたというのに、真面目に受け止めることができない私は、なんて大人げないんだろう。

 心で泣きながら、言葉は口を衝いて出て止まらない。


「とても良いもん撮れたって、塚本さん喜んでました。見本誌もらうの楽しみですよね。きっとファンの方も、大興奮間違いなし――」

「あんたは?」

「……え?」

「あんたは、どう思った?」


 澄んだまなざしに、また吸い込まれそうになる。


「俺は、すごくうれしかった」


「あんたはずっと俺に憧れてたとか言ってたけど――……俺の方が、たぶん、ずっとあんたに、憧れてたから」




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