一途な溺愛プリンスはベールアップを譲れない
「はい、どーぞ。お姫様」

 ぽすん、とシロツメクサの花冠をかぶせられた。

 片手で雑に乗せられたあたりお姫様感は皆無とも言えるが、この年になってそう呼ばれるとは思わず、なんだかくすぐったい。


「あ、アリガトウゴザイマス……」

「なんだ、全然できてないじゃん」

「う……すみませんね、不器用で」

「貸して」


 そう言って彼の手により、私の編んだシロツメクサは、小さな花冠になった。

 花冠というよりは、むしろ……。


「それ、いいな」


 声には出していないはずなのに、肯定されてドキッとする。

 心を読まれていたかと思うような、絶妙なタイミングだった。

 彼はもうあと数本シロツメクサを摘むと、器用に編み始める。




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