一途な溺愛プリンスはベールアップを譲れない
『伶くんは、初恋は覚えてますか?』

『覚えてます。4歳くらいの頃ですね。キッズモデルをしていたんですけど、同じ事務所の先輩のモデルさんに』

『へえ~! 事務所の先輩というのは、大人? それとも』

『小学生でした』

『可愛いなぁ~、憧れの先輩やったんやね。当時の伶くんの写真とか、出ますか?』

 今見ている画面には写らないが、4歳の頃の自分の写真が数枚モニターに映しだされ、観覧者が口々に可愛いと叫ぶ声が入っている。


『告白とかしたの?』

『……しました。全然相手にされてなかったんですけど、僕はかなり本気で……プロポーズも何度もしましたよ(笑)』

『肉食系4歳児!(笑) 今も、好きな人ができたらぐいぐい行きます?』

『そうですね。わりと盲目的かも……でも肝心なところで、ダメですね。ヘタれます』

『ええ~! そのルックスがあったら、怖いもんなしやろ~』

『いえいえ。……実は、最近その初恋の方と再会できたんですけど』

 観覧席が悲鳴のような声に包まれる。

『僕のこと覚えてなかったんですよね。勇気を振り絞って話しかけたのに、“ファンです!”とか言われちゃって、すごくショックで(苦笑)』

『あちゃー! なんやろね、こんなに格好良くなってるなんて思わなかったんやろね。え、それでそれで?』

『いや、何も言えないですよ~、緊張しました』


 親しみやすい笑顔で笑う自分。

 テレビ用に作られた“宝来寺伶”ではあるが、話しているのは本当にあった話だ。


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