一途な溺愛プリンスはベールアップを譲れない
 あの日交換したシロツメクサの指輪は、さすがに少し枯れ始めていた。

 ドライフラワーにして保管しようと試みたのだが、うまくいかない。

 一輪だけ引き抜いて押し花にすることも考えたが、彼女の指で編んだ――途中から自分が手を貸したが――ものを崩すのは非常にもったいない気がして、できなかった。


 とある遊園地で売られている、メルヘンな絵柄が描かれたクッキーの缶を取り出す。

 これは、昔彼女がお土産でくれたものだ。

 中身は全部食べてしまったが、缶は捨てられず……大事なものを入れる宝箱として機能していた。

 誕生日に彼女がくれた手書きのメッセージカード。

 ロケ先で買ってきたというお揃いのキーホルダー。

 俺の好きな色で編んでくれたミサンガ。

 色々あるが、久しく間が空いて仲間入りを果たしたものは……淡いグリーンのヘアクリップ。

 彼女の髪をほどいた際に、つい、持って帰ってきてしまった。

 大人になった彼女が身に着けていたもの。

 彼女の、髪に触れていたもの。

 考えただけで愛おしくて、胸が締めつけられて泣きそうだ。

 本当はここに、シロツメクサの指輪も入れたいのだが……さすがに植物をそのまま入れるのはどうなのだろうと思い、留まっていた。


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