一途な溺愛プリンスはベールアップを譲れない

ヤキモチ

 こんなに楽しみに待った仕事は初めてだった。

 ――今日は、彼女に会える。

 あらかじめわかっているだけで、こんなにも胸が躍るものなのか。



「あ」

 スタジオに到着して早々、見つけてしまった。

 彼女の背丈よりも大きな機材を背負うようにして運んでいる。

 重いのだろうか。大変そうだ。


 ……手伝いたい。

 直感で飛び出しそうになったが、ぐっとこらえる。

 人の目があるところで、彼女を特別扱いするわけにもいかない。

 でも……。


 迷っていると、気付いた男性のスタッフが彼女に駆け寄り、機材を支えた。

 汗だくの彼女はにっこり微笑み、ぺこぺこ頭を下げている。

 ……何を話しているんだろう。


 胸が、チクリと痛む。




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