一途な溺愛プリンスはベールアップを譲れない
 岡田さんは他愛もない話をたくさんしてくれた。

 この近所のどこどこのお店のナポリタンが美味しいとか、好きなゆるキャラのご当地キーホルダーを集めている話とか。

 きっと、私の気を紛らわせるためだろう。

 おかげで宝来寺さんと石神さんが到着した頃には、すっかり私の心も落ち着いていた。


「……先ほど、事務所から連絡がありました。伶宛てに不審なメールが届いたそうです」

 石神さんの運転する車に乗り込んで早々、深刻な面持ちで石神さんが言う。

「脅迫と受け取り、送信元を解析させていますが、何やら複雑なプログラムが組まれているようで、難航しています」


 バックミラー越しに見えた私の顔に「心当たりがある」と書いてあったらしい。

 石神さんは表情を変えずにじっと前を見据えたまま、続けた。

「伶からあらまし程度に話は聞きました。その上で届いたメールを転送させ、目を通し、おおよそは把握しているつもりです。」


「……怖かったでしょう」


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