出られない51の部屋
15の部屋
『嫌いなものを言わないと出られない部屋』
そう書かれた扉。私とミケは顔を合わせ、頷き、部屋の真ん中に腰を下ろす。
「嫌いなものねー」と、ミケは言いながら上を向く。
「また梓は、嫌いなものなんてないーって言うの?」
「あるよ、嫌いなもの」
私がそうはっきりと答えると、ミケは「……へ?」と見事な間抜け面。
「好きなものはないのに、嫌いなものはあんの?」
ミケは、嫌みたらしい笑みを浮かべる。そんなミケに、私は頷いてみせた。
「あ、でも、嫌いなものってこの変な部屋にきてからできたの。だから、前はなかったよ」
私がそう言うと、ミケは口元をひくつかせ、「あのさ」と少し低い声を出す。
「なんとなく想像つくけど、一応聞く。嫌いなものって?」
「ミケ」
そう即答すると、項垂れるように片手で顔を覆い、大きくため息をついた。
そして「まじか」なんてブツブツと呟いている。
指と指の間からミケの瞳が見え、ふと目が合う。
「……普通、逆じゃない? なんで好きになんないの?」
「自分が好かれるようなことをしてから言ってくれない?」
「ははっ、まーいいや」と、ミケは顔を上げて苦笑いをこぼす。
「そういう、ミケは? 嫌いなもの、早く言ってよ」
ミケは、ふっと、笑みを浮かべる。
目を細め、口元をあげ、何かを隠すための笑顔、意味深な仮面だ。
「人間」
ミケがそう言った瞬間、扉の開く音が部屋に響いた。
「え……?」
「俺はさ、人間が嫌いなんだ」
そう言いながら、ミケはゆっくりと立ち上がる。
「女の子が、好きなのに?」
「嫌いも好きのうち、ってやつ? 好きだけど嫌い、嫌いだけど好き。そんな感じ?」
不敵な笑顔の仮面をつけながら、ミケはそう言った。そんな笑みに、私はなぜか安心して。
「ミケらしいね」なんて言葉をミケへと言っていた。
ミケは少し目を丸くし、「だろっ?」と、相変わらずの仮面を見せた。