出られない51の部屋

23の部屋



しばらくは、こんなのばっかが続くのだろうか。
 

私は、扉のスクリーンに綴られた文字に、顔をしかめる。
そんな私とは逆に、ミケは喉を鳴らして笑っていて。
 
「どうする、梓。どっちが下やる?」
 
そうニヤニヤとしながら聞くミケに、私は軽くにらみつける。
 
「……ミケ、自分の体重知ってる?」
「んー、4キロくらい?」
「わけのわからないこと言ってないで、早くしゃがんでよ」
「はいはい」
 
ミケは変わらずクスクスと笑いながら、私の前にしゃがみ、背中を向ける。
 
「ほらっ、こい!」
「……そんな犬を呼ぶみたいに」

そう呟きながらも、私はミケの首の横に、足を通す。太ももで、ミケの首を挟み、首の後ろに座る。
 
「梓ー、立つぞー」
「う、うん」
「ちゃんと掴まってろよー。んじゃ、せーの」
 
ミケは、「よいしょっ」と、立ち上がる。
 
「……っ」
 
自分の身長では、絶対に見れない景色に、私は思わず息を呑んだ。
扉が開く音に、私はハッとし、「ミケ、もういいよ」と声をかける。
 
「えー? 俺はもうちょっとこうしてたいけど」
「は? なんで」
「女の子の太ももで顔を挟んでもらえる機会なんて、そうそうないじゃん?」
「……いいから早く下ろして」
 
私の低い声に苦笑いしながらも、ミケはゆっくりとしゃがむ。
そして、私の足が地面に着き、私は開いた扉に書かれた文字を見た。
 





『肩車をしないと出られない部屋』
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