出られない51の部屋
きみとわたし
26の部屋
『三分間手を繋がないと出られない部屋』
そう、扉のスクリーンに文字に綴られている。
私は、視線だけミケへと向ける。すると、ミケも、視線だけ私に向けた。そして、ミケは口元を上げ、私に手を差し出す。
私は、その手を見て、ミケの顔へと視線を移す。ミケは、不敵な笑みを浮かべていた。その笑みが少し不気味だったけど、その笑みを突っ込んでも何も教えてくれないのはもうわかっている。
私は、少し肩をすくめて、ミケの手を取った。
ミケは私の手を握り、部屋の真ん中へとゆっくり歩く。そして、手は繋いだまま、一緒に腰を下ろす。
「……ミケ、嬉しそうだね」
「そう?」
そう聞くミケに、私は頷く。
さっきから、ミケはずっとニコニコと笑顔を見せていて、見るからに機嫌が良い。
「……手を繋ぐ、って良いな」
「え?」
「独り言」
そう不敵な笑みを見せるミケは、相変わらずだ。少しだけ、ギュッとミケの手を強く握る。すると、あることに気づき私は、ミケに顔を向ける。
しかし、その瞬間、扉が開く音が聞こえた。
ミケは、パッと手を離し、立ち上がる。
「行こう、梓」
「……うん」
私は、ゆっくりと立ち上がる。
……少し、少しだけ、ミケの手が震えている気がした。