moon~満ちる日舞う少女~【下】
ーガチャー
美「愛斗さんっ!!!」
愛「…美月、来ると思ってたよ」
美「はぁ…はぁ…。…陸の、休学って…」
愛「そうだ。お前が思ってるとおり」
財前家…。
美「ーっ」
愛「…今回はさすがに何も出来ねぇや…」
愛斗さんのこんな弱々しい声は初めて聞いた。…だけど、私も愛斗さんと同じ。何も出来ない。だって相手はあの財前家。…世界を支配してるも同然の名家。
美「…私…陸に嫌われてて…バカにされてて…。…でも、案外受け入れられてるのかなって思ってた。……全然話せなかったし。…でもっ」
もし陸が望むなら…助けたい。
『助けてくれ』
ーハッー
あの声…陸…だった…?……ううん、陸だった。…一昨日屋上出会った時も、彼は私にSOSを出していた。…あんな風に話すなんておかしいもの。
奈「落ち着け」
美「…え?」
いるはずのない人物がいて、私は目をこすった。
美「奈津?」
奈「おう」
美「え、なっ…なんで?」
愛「俺が呼んだのさ。きっとお前はまた1人で無茶するだろうし」
奈「そーゆうこと。…けど、美月らしくないな」
美「…へ?」
奈「財前家にはかなわないって思ってんだろ?」
そりゃそうだよ。…世界敵に回すくらいの覚悟ないとダメだって思う。
奈「…美月なら、誰が相手でも"私負けないし"っていうだろ。」
それは…喧嘩だから…。
奈「……お前の考えてる事はなんとなくわかるよ。…フルムーンにでもなる気なんだろ?……」